ちぇんばろってなあに

なぜチェンバロが・・・?

(クリック)
正確にきちんとした説明をしますと、専門的になり難しくなりますので、私なりに簡易にお話させていただきます。
(また、レッスンではバッハなどバロック曲をすべてチェンバロのみで弾かせたり、チェンバロの奏法・概念をそのまま現代ピアノでコピー演奏させる事が目的でもありません・・・それは無理ですし。)

結論から申し上げると、それは~本質的自己表現☆わかって・ひけて・うれしいな☆に大いに役立つからです。総合的な音楽力育成の1つとして大変重要です。

現代ピアノで弾かれることの多いバロック曲の大半は、現代ピアノではなく、当時の古楽器で演奏されていました。(チェンバロ・クラヴィコード・オルガン・フォルテ
ピアノなど)ですからバッハ以前のバロック曲を古楽器であるチェンバロなどを交えてレッスンすると、バロック曲を理解するきっかけとなり、現代ピアノで演奏する上でも、良いヒントが得られ、その体験によってバロック時代以降のクラシック演奏の向上にもつながります。

ピアノの歴史というのは、およそ200~250年あります。(フォルテピアノの使用が盛んになってから以降として)・・・長い歴史ですね。
その間に、素晴しいピアノ曲が山のように生まれ、ピアノにしかできない独特の技法や表現が生まれました。

時(時代)の流れに簡単に区切りは出来ませんが、それよりもっと昔のおおよそ300年~400年の間には上記のピアノは存在せず!、チェンバロなどの鍵盤楽器やパイプ
オルガンやクラヴィコードなども含めた古楽器がヨーロッパの一部の人々に盛んに使用されていました。

比べてみると(優劣ということではなく)、古楽器群がピアノの歴史と同じ、もしくはそれより長い期間を占めていることがわかります。とすると、これらピアノ以前の古楽器に対して、わかっているようで、よくわかっていないままで良いのかな?という思いが沸いてきます。
もしかして、何か大切なことや気が付かずに見落としてしまっている重要なことがあるかも知れません。遠い外国の古い事なので★わからず・ひけず・かなしく★なりがちかもしれません。またそれさえ、気が付きにくいのかも・・・。

バッハより以前の巨匠達はもとよりバッハの息子たち・ハイドン・モーツアルト・ベートーヴェンの初期(主に子供の頃位)にも、こうした楽器(クラヴィコード
・チェンバロ・オルガン)は使用されていました。又、楽器がフォルテピアノなどに代わっていっても、次の時代(古典・ロマン派・近現代)の作曲家は、少なからずこれらの楽器を使用していたバロック時代以前の音楽に影響され、その精神をDNAのように受け継ぎながら自己の新たな芸術音楽を産み出していきました。

ルネッサンス・バロックの作曲家達(J・S・バッハなど多くの巨匠達)はこれらの楽器を熟知し、楽器の魅力が最大限引き出されるよう、又時代の要請に答えたこれ以上ないであろうと思われる素晴しい曲を(宝の)山のように産み出しています。

このように、古楽はクラシック音楽の根幹なのです!

上記は重要なレパートリーため、昔から現代ピアノのレッスンでも、習い始めのお子さんや、初心者の方が小品~難曲へと取り組んでいく場合が多いのですが、(私もそうでしたが)今にちでも、現代ピアノでそれ用に翻訳された楽譜で何の違和感なくレッスンされるのが、普通・当たり前の多数派でしょう。そのレッスンは上記のような背景があるため、意図せずとも絵に描いた餅のおいしさを説明されるようなものになりがちで、チェンバロなどで習えるのは、まだまだ小数派です。

やはり、ヴァーチャルでなくリアルな餅を食するように、現代ピアノに似ていて全く違うチェンバロやその他の古楽器に直接触れることが大切です。するとこの楽器は何?どんな音がするの?どうやって弾くの?この音楽は何だ?!という興味関心のモチベーションが何故だか突然沸き上がってきます。特に歴史などまだ学んでいない子供達は、バロック音楽や古楽器に先入観や偏見なく興味関心を抱きます。又余計なテクニックを身に付けていない小さな生徒さんほど、構えることなく自然体に美しく音を奏でる柔軟性を持っています。

しかし、ただ古楽器に触れれば良いと申し上げているのではなく、♪4の初めで触れたように、長い歴史上の背景がもたらす西洋音楽に関する様々な事象を理解しつつ、今にち様々な楽器楽譜が混然一体と存在している中で、これらの音楽・楽器に対応できる力を身に付けることが重要でしょう。特に、初心者や、あまり詳しくない方には十分なサポートを受けることが必要です。
いずれにせよ、このような直接的な経験をきっかけとして、現代ピアノでバロック曲を弾く上でも、それ以降の時代の曲を弾いて行く上でも、様々なヒントのカケラを得ることが出来るならば、それは何よりの大きなメリットであると考え、当教室では、幼い生徒さんにもお話をしながらチェンバロに触れる機会をレッスンやクリスマス会などで設けております。

ヒストリカルチェンバロについて

彡☆日ごろ感じていることを、よくご存じない方のために~☆彡
現代のピアノ(鉄骨のフレームで弦を引っ張ってハンマーで弦をたたく)ですが、昔の古楽器はその種類により音を出す仕組みが様々有り、それぞれに独特の魅力が有ります。チェンバロもその中の1つです。

呼び方

チェンバロ(ドイツ語読み)・クラヴィチェンバロ(イタリア語読み)・ハープシコード(英語読み)・クラヴサン(フランス語読み)は、皆同じ撥弦鍵盤楽器を指します。
※クラヴィコードは違う仕組みです。
モダンピアノと違って色々あって混乱しますね。初めはチェンバロと覚えれば良いと思います。
全てわかるころには、チェンバロ通になっているでしょう・・・。

歴史

大まかな流れですが、この楽器の歴史は古く、14C~15C頃にはヨーロッパ(イタリアなど)に存在し、16~17C頃、フランドル地方でルッカース一族という職人達(ギルド)がフェルメールの絵に登場するような一部の富裕層(東インド会社で儲かった?)に優れた楽器を製作し、その流れが17~18C頃、フランス・ヴェルサイユ宮殿(クラブサン楽派という優れた作曲家達が宮殿で活躍していた。かの有名なマリーアントワネットが暮らし、モーツアルトも訪れたところ。)をはじめとするヨーロッパ王侯貴族の間で気に入られ・流行り・隆盛を極めたが、18C中頃~19C頃には、フランス革命の影響やフォルテピアノの台頭で弾かれなくなり、その後19C終末~21C頃にモダンチェンバロで復活し、20C中頃に再び古楽運動が興り、ヒストリカルチェンバロの楽器の復元・研究・演奏活動が盛んに行われるようになってから、その存在が見直されています。
・・・ふう~。とまあ、5、600年分を数行で説明するのは無理があり、キツ過ぎますので、興味ある方は、是非是非きちんした本などでお調べください。
私はとしては、昔(CD以前で聴いて)は、当時のバッハはモダンチェンバロを弾いていたのか・・・(なァ~???)なんて思っていました。

種類

チェンバロは時代・国によって種類と形が多種多様に有ります。形はグランドピアノ型・長方形・三角・多角形・・・。姿・中身も注文主の要望・センスなのか、当時の最新ファッションを身にまとうように(中にはこれでもかと盛りすぎ?で)装飾されている楽器もあります。あれもこれもチェンバロなの?と思えるほどですが、おおよそ、そのお国柄・文化背景からその楽器の姿・性格・音色が現れているようです。(Ex.フランス料理・イタリア料理のように。)どうしてそのようなスタイルなのか?興味を持ち理解していると楽曲の解釈の上でも役立ちます。優れた奏者が演奏すると、その楽器はまるでその国の言葉を話すように音楽を歌い語ります。
・イタリアン・フレンチ・ジャーマン・フレミッシュやヴァージナル・スピネットと呼ばれる種類があります。

音の出方・仕組み

上記のチェンバロは、鍵盤にの先端にジャックという木の棒(割りばしの半分位の長さ)の先にとても小さな薄いプレクトラムと呼ばれる爪(チェンバロにそぐわない汚い例えですが、本当に爪切りで切った人の爪を、真っ直ぐにしたような大きさの物。プレクトラムのストックが少なくなってくると、代用できないかナ ?なんて思ってしまいます。)が付いていて、これが弦を下から上にはじいて音を出します。鍵盤をゆっくり押すと途中に引っ掛かりを感じます。その速度によって音の表情が変わります。
これを曲の解釈によって、どのように1音ずつコントロールして組み合わせていくかが大変重要な、それこそ「鍵」で、これがアーティキュレーションなのだと思います。
語学の発音の習得のようです。物理的にタダの切る・つなげるではありません。
これらを的確なタッチで行うことによって、チェンバロ特有の倍音が豊かに鳴り響いてきます。何の楽器のそうかもしれませんが、初めは拙くても、ゆっくり1音1音丁寧な
このぐらいかな?と思うタッチで試して、弾いたら響きを聴く、弾いたら響きを聴くを、繰り返しながら耳を養うと、美しい音の連なりが出来上がっていきます。ピアノで散々
練習して間違えずに弾けるのだからと過信し、力んで一気に弾いてしまうと、ガチャガチャな音になってしまいがちです。
上記が、この楽器の重要ポイントです。(気持ちはわかりますが、楽器の外見の美しさばかりに気を取られないで下さいね。)
今では爪がプラスチックのデルリンですが、昔は鳥の羽の軸を使用していました。爪は、折れたら自分で薄くナイフで削り、良いと思える音を調整しなくてはなりません。削りが足りないと図太い音になり、削り過ぎると切れたり、ペニャペニャな貧相な音になってしまいます。慣れてくると、メンテナンス時点でも、良い響きを創り出そうという音へのこだわりが生まれます。

調律・ピッチ

モダンピアノは調律師さんが音律・ピッチを調整してくれますが、チェンバロは、普段は狂ったら自分で行います。(今はチューナーでもできます。)作曲者の国・時代によって、その曲に合うであろうピッチ・音律あり、演奏者の解釈により選択する必要があります。楽器だけでなく音律・ピッチの概念はいろいろあり、まだよくわかっていないこともあるようです。ただ半音低いではありません。
モダンピアノの調律・ピッチの絶対音感が身に付いているところで、このような音に
初めて触れると、ギョッとするかもしれません(A=415Hzだと、楽譜を見て弾いていて予想される音の高さと、実際弾いて聴こえてくる音の高さが、半音ずれて違って聴こてくるから。)でも慣れると、逆にモダンピアノの調律・ピッチに物足りなさを感じるようになり、その曲にふさわしい調律・ピッチが恋しくなります。

鍵盤

・鍵盤の色
はピアノと同じ黒白・ピアノと逆の黒白・白木のものなど楽器によって色々です。
理由も諸説あります。初めは気になるかもしれませんが、自然素材なので段々しっくり馴染み、その感触が忘れられなくなります。
・鍵盤の幅
はモダンピアノより若干狭い物(フレンチ)もあり、モダンピアノでオクターブが大変な私を含めた手の小さい人や、子供にとっては有り難く、それだけでも嬉しくなります。
(でもオクターブの激しい曲はほとんどありませんが。)小型の楽器は鍵盤の長さも短く、手が大きく、モダンピアノの幅に慣れている方は、窮屈かも。(フレミッシュは違う幅)
・鍵盤数
はモダンピアノより少なくその数は楽器によって様々です。(4~6オクターブ)
フリューゲル型(グランドピアノの形)で2段鍵盤でも曲によっては、鍵盤数が足りなくなってしまう曲もあります。(その楽器に合っていない選曲ということ)そういう楽器が用意されている場合は、注意が必要です。私も前もって選曲を変更した覚えがあります。ですので、私は2段鍵盤で鍵盤数の1番多い楽器を使用しています。が、それもベストの選択だとも言い切れないのがチェンバロの奥の深いところです。ヴァージナルなどは鍵盤数が少ないですが、その楽器のために創られた素晴しい曲がたくさんありますし、1段でも素晴らしい楽器があります。でも、またそれでは2段用で音域の広い曲は弾けなくなり悩みどころです。何を目的にどんな楽器を選択するか、つまりどんな楽器だとどんな曲が弾けるのか、知っていないと楽器の選択もできないということです。また、同時に可能な条件が揃えば、選択できるという贅沢な自由もあるということです。

レジストレーション・強弱

チェンバロの多くはレジスターという機能が付いています。
レジストレバーの操作でONにすると、弦の増減などで音色が変わり、OFの時とは違う響きと音色になります。
2段鍵盤の楽器においては、おおよそ、上段は下段と同じフィート(8’)でも若干軽く小さめの可愛らしい音に感じ、下段はノーマルで伸びやかな柔らかい美しい音に感じます。
曲によっては、手の交差の関係で1段では手が重なり合い、とても弾きにくくなってしまうので、1段の楽器よりどうしても2段が必要な場合もあります。(だからモダンピアノだとその曲は大変弾きにくいです。)
上鍵盤を奥に押し込むと下鍵盤と連動し2本になり、1段の柔らかさと変わって力強さが出てきます。(カプラーといい上段は勝手に動く)1段の場合は違う場所で操作します。
更にもう1つのレジスト(1オクターヴ高い4’)を足して3本にすると絢爛豪華な堂々たる音になり、ここぞ、という時や適した曲に使用し、迫力を出します。又下段のみにそのレジスト4’を足すとそれよりは、軽めで華やかな音も作れます。もう1つ、バフストップというレジストは上段で使われ、琴(ハープ)のようなやや抑え気味の独特な音になります。(当時のリュートをまねたとか。)これらのレジストを、曲によって適宜使い分けなければなりません。ということは、やはり曲の内容を理解していないと選択もできないということです。おおよそ定番のレジストはありますが、絶対これと決まっているわけでもなく、また何でも好き勝手で良いのもないため、レジストの選択に迷うときもあります。(そういう時は、だいたい方向性が定まっていないときなのですが。)
又このレジストで練習したのだから、といって違う場所で違う楽器を弾くとき(たとえ製作者が同じ・同じ機種だとしても)そのレジストがベストの選択になるかは、状況により変わるかもしれません。(家のピアノと発表会で置いてあるピアノが違うように。)

ところで、言葉だけで知っていて・実際見たこと・聴いたこと・弾いたことのない方が、「チェンバロって強弱ができないんでしょ。(だから古いモノは劣っていて強弱の出る新しいピアノに負け、廃れた、的解釈?)」と断言されているのを今だに見かけます。
(確かに時代の要請で、広いホールに聴衆を多く集客するためには、大きな音の出る楽器も必要になると思いますが。)
上記のレジスターの構造でも明らかな強弱は付きますし、(でも、大きさを変えるというより、表現を変えたいことの方が多いと思うのですが。)
レジスターに頼らずとも、前述のアーティキュレーションの技術でモダンピアノほどではないにせよ、若干の強弱やクレッシェンドやディミヌエンドが付きます。また、それを頭と体の中で明確にソルフェージュして、ものすごく注意・意識して演奏しなければ音や曲にならないのです。音楽をわかって弾けているか・いないのかが丸見えになります。
難しいですが、大きな音(声)ばかりに頼った手段で相手に語ったり・説得しようとする考えがなく、それにはあまり重きを置いていなかった時の楽器なのではないかと個人的には思います。

その他、こういった古楽器を扱う上で、体の使い方・作曲家に対する理解・楽譜の見方・音楽の調や形式や装飾の解釈・などなど様々学ぶことによって、その音楽にフォーカスしていけるのだと思います。